リナザウをインターネットサーバにする

――Linux Zaurusでどこでもブログ(5)


 Linux Zaurusに boa を入れ、リナザウをWebサーバに変身させられたら、今度はこれをインターネットに接続し、インターネットサーバにしてしまおう。
 インターネットサーバにしてしまう方法はいくつか考えられるし、そのメリットもあるだろう。たとえばいつもバックに入れておき、出先でもインターネットサーバとして動作させられるとすればどうか。本当に、どこでもブログになる。

 これは面白い。が、面白いだけで、とくに意味があるというわけでもないかもしれない。
 というのも、よ〜く考えていただきたい。ここでは ZaurusBlosxom を入れてブログをやろうとしているのだが、ブログというのはもともとサーバに置いておき、そのサーバにアクセスしてニュースや日記ページなどを手軽に更新できるようにしたツールだ。Blosxom も同じ。
 ブログをインストールしたサーバにアクセスできれば、ブログそのものは簡単に利用できる。とすれば、Zaurusでインターネットにアクセスできれば、すなわちどこでもブログになる。わざわざZaurusをインターネットサーバにする必要は、ない。
 でも、面白そうだからやってしまおう、というのがこのレポートの趣旨だ。

 Zaurusにboaを入れ、サーバに変身させたら、今度はZaurusにDoCoMoの @FreeD やDDIポケットの AirH" などのCFカードをセットし、インターネットに接続しよう。この方法は、すでに嫌というほど説明されているから、ここではあまり詳しく書かない。

 @FreeDやAirH"なら、いくらインターネットに接続しても定額だ。CFカードをZaurusにセットすると、設定画面があらわれるか、あるいは「設定」ホーム画面で「ネットワーク設定」を起動して、@FreeDやAirH"の設定を行なえばいい。
 さらに、タスクバーの地球アイコンをタッチすると、いま設定した@FreeDやAirH"の設定名が表示されるから、これを選択した状態にして「接続」ボタンをタッチ。これで無事に接続されれば、インターネットに接続されたわけだ。

ザウルスの接続画面
「ネットワーク設定」で、「ダイヤルアップ接続」を指定して、@FreeDやAirH"の設定を行なう。
ザウルスの接続画面で接続先名をタッチ
設定した接続先名をタッチすれば、インターネットに接続される。
 @FreeDやAirH"でインターネットに接続すると、接続するたびにIPアドレスが割り当てられる。これは動的IPアドレスと呼ばれるもので、接続するたびに異なるIPアドレスが割り当てられることになる。

 インターネットに接続したら、アプリケーションホーム画面で「ターミナル」アイコンをタッチし、ターミナルを起動しよう。

 あっ、もしかしてターミナルがないとか言わないよね。もしターミナルがなかったら、これは付属していたCD-ROMからインストールしておけばいい。

ザウルスのターミナルアイコン
アプリケーションホーム画面で「ターミナル」アイコンをタッチして、ターミナルを起動する。
ターミナル起動画面
ターミナル起動画面。見やすいよう、画面の背景やフォントの大きさを設定しておこう。
 ターミナルを起動したら、コマンドラインで次のようにコマンドをタイプして実行しよう。
  bash-2.05$ /sbin/ifconfig
 するとズラ〜と何か表示される。表示されたもののなかから、「ppp0」の部分を見てみよう。画面がスクロールしている場合は、[Shift]キーを押しながら↑キーを押し、遡って見ればいい。

「ppp0」の欄の「Protocol inet addr:」という部分に、たとえば「210.130.33.41」といった表記があるだろう。これが現在インターネットに接続しているZaurusに割り当てられているIPアドレスだ。

ザウルスでifconfigを実行する
ifconfigコマンドを実行する。
ifconfig実行画面
いろいろと画面に表示された。
画面を遡って表示させよう
[Shift]キーと[↑]キーを押して画面を遡り、「ppp0」の部分を確認しよう。ここでは「210.130.33.41」と設定されていた。
 では、実際にこのIPアドレスのマシンに、インターネット経由で接続できるかどうか確認してみよう。
 たとえば、パソコンでInternet Explorerを起動し、アドレス欄に「http://210.130.33.41」と指定する。するとパソコンはインターネットに接続され、IPアドレスに「210.130.33.41」が割り当てられているコンピュータにアクセスする。つまり、パソコンからインターネット経由でZaurusにアクセスされるわけだ。

 一方、Zaurus側ではboaによってWebサーバが設定されているから、インターネット経由でアクセスのあったパソコンに、boaで設定されているルートディレクトリのファイルを表示してくれる。
リナザウがWebサーバになった!
パソコンでリナザウのIPアドレスを指定すると、リナザウに接続された。リナザウがインターネット上のWebサーバになっていることがわかる。
ザウルスの接続画面でtest.htmlを指定する
表示されたファイルのなかで、test.htmlを指定してみた。ちゃんとWebページが表示されているのがわかる。
 boaでルートディレクトリとして設定しているディレクトリに、index.htmlファイルがない場合は、どうやら「ファイルがない」というエラーになるようだが、先に作っておいたtest.htmlファイルがあるから、これを指定すると、ちゃんとWebページが表示されたはずだ。

 どうだ。Zaurusがインターネットサーバになっているのがわかるだろう。リナザウでWebサーバを作るのなど、たいして難しいわけではないのだ。

 ただし、@FreeDを利用している場合は、ドーマント方式のため、一定時間使わないと回線が切れてしまう。そのため、パソコンからアクセスできないこともある。そんなときは、Zaurus側でNetFrontなどを起動し、強制的に回線を再接続するといい。
 実は、この@FreeDを利用する場合は、たとえば一定時間ごとに画面の書き換えを行ない、強制的に回線を再接続させる、といった仕掛けを作っておくといいのだが、それは機会があれば説明しよう。

 とりあえずこれで、Zaurusがインターネットサーバになることがわかった。


ダイナミックDNSでサーバ設定

――Linux Zaurusでどこでもブログ(6)

 boaを利用し、@FreeDやAirH"を利用すれば、Zaurusがインターネットサーバになることがわかったが、しかし前述したように、@FreeDやAirH"で接続したときに割り当てられるIPアドレスは、動的IPアドレス、つまり接続ごとに異なるIPアドレスだ。これではZaurus側に割り当てられているIPアドレスを相手に教えないかぎり、相手からZaurusに接続することはできない。

 そこで利用したいのが、ダイナミックDNSサービス(DDNS)だ。ダイナミックDNSサービスというのは、IPアドレスとホスト名を関係付け、インターネット上のDNSサーバに登録してくれるサービスだ。

 インターネットのサーバにアクセスするには、通常はホスト名を指定してサーバにアクセスする。たとえば、「http://www.yahoo.co.jp/」というのは、Webサーバの「yahoo.co.jp」というドメインのサーバに接続する、という指定になる。
 この「yahoo.co.jp」というアドレスは、実はコンピュータには理解できない。そこでこのアドレスをIPアドレスに変換する必要がある。それを受け持っているのがDNSサーバだが、DNSサーバでは「yahoo.co.jp」と指定されると、これを「210.81.150.5」というIPアドレスに変換してくれる。
 実際、アドレス欄に「http://210.81.150.5/」と指定してアクセスしてみるといい。Yahoo!JapanのWebページが表示されるはずだ。

Yahoo アドレス欄にIPアドレスを指定した
 ところが、インターネットに接続するごとにIPアドレスが変化するような接続、つまり、リナザウに@FreeDやAirH"をセットして接続したようなケースだが、この場合、他のユーザーがこのリナザウにアクセスするためには、IPアドレスを指定して接続する必要がある。しかも、接続ごとに変化するIPアドレスだ。
 これでは不便でしょうがない。接続されたら、割り当てられたIPアドレスを確認し、これを接続しているユーザーに教えなければならないからだ。

 そこで出てきたのが、ダイナミックDNSサービスなのである。ダイナミックDNSサービスを利用すれば、動的に割り当てられたIPアドレスを、いつも決まったホスト名と関連付けてくれるから、ホスト名がわかっていればたとえIPアドレスが変わっていても、他のユーザーがこのリナザウにアクセスできるわけだ。

 ダイナミックDNSサービスを行なっているところは、いくつもある。たとえば、DiCEなどで探してみるといい。また、いつも利用しているプロバイダで、ダイナミックDNSサービスを行なっているところもある。@niftyやODNなどがサービスしているから、これが利用できることもあるだろう。

 もっとも、ダイナミックDNSサービスのなかには、無料で利用できるサービスもあるから、こんなのをありがたく利用させていただくのもいいだろう。たとえばここでは、ieServer.Netを利用してみた。ユーザー登録すれば、誰でも無料で利用できるありがたいサービスだ。

 ieServer.Netでユーザー登録し(これはパソコンでいい)、ユーザー登録されたら、リナザウのNetFrontでアクセスしてみよう。
IPアドレスを登録する
 NetFrontieServer.Netにアクセスする。ページ内の「回線IPアドレス××××をDDNSに登録」の欄で、ユーザー名とドメイン名、パスワードなどを記入し、[IP登録]ボタンを押す。
ホスト名とIPアドレスが関連付けられた
 設定したホスト名と、リナザウのIPアドレスが関連付けられた。ちなみに、zaurus.or.tpというホスト名を取ってしまいました。
 これで現在リナザウに割り当てられているIPアドレスが、設定したホスト名(ここではzaurus.or.tp)と関連付けられた。
 実際に、パソコンのブラウザで「http://zaurus.or.tp/」と指定してみるといい。
ブラウザの[ファイルを開く]ダイアログボックス
 ブラウザでホスト名を指定する。
ファイル一覧が表示された
 リナザウのファイル一覧画面が表示された。
 これでホスト名、つまり「zaurus.or.tp」さえわかっていれば、誰でもこのリナザウにアクセスできるわけだ。たとえ接続ごとにIPアドレスが変わっても、ダイナミックDNSサービスでホスト名にIPアドレスを登録し直せば、いつでも、誰でも、このホスト名でリナザウにアクセスできることになる。

 ただし、実際にやってみると、いまさらながらこれがひどく不毛なのに滅入った。とくに@FreeDを利用した場合、とにかく回線切れまくりなのだ。こんなときは、一定時間ごとにページをリロードするページを作成しておくといい。Zaurusをインターネットに接続したら、NetFrontでこのページを表示させておけば、一定時間ごとにデータを読みに行き、とりあえずドーマントの回線切れを回避できるようだ。

 あるいは、Zaurusを自宅に置いておき、これをサーバ化してここにアクセスする、というのならありかな。そんなときも、DDNSなら便利に活用できるはずだ。

 というわけで、次は Blosxom をインストールして、リナザウでブログを作ってみよう。