プーケット・タイ5日間の旅
Part.2(2/3)


96/8/18(Sun)
 朝起きると、やはり天気がよくない。午後からバンコクに移動するため、遊べるのは午前中だけ。
 昨日と同じくプールサイドの Ocean View Coffeeshop で朝食。今日の日本食は、おかゆ。ウェイトレスたちが面白がって、次男の腕や頬に触れる。そのたびに次男は、緊張して固くなっている。それがまた面白い。
 昼まで泳ぎたいと息子たち。ぼくはこのレストランの外に置かれたテーブルで、ココナッツのジュースを頼んで、写真を撮ったりしてすごした。隣のテーブルには、アラブの石油王のような家族連れ。体格も立派な奥さんが、子どもたちのいたずらに顔色も変えず、髭を生やした親父さんが子どもたちを追い回していた。なんだか映画の中の1シーンみたいだ。
 昼食にタイのカレーを頼み、部屋に帰って荷造りをしてロビーへ。ちょっと太めのガイドが訪れ、そのクルマでプーケット空港に向う。

タイ2-1  来るときは夜で気がつかなかったが、途中、水牛がいたりバナナ畑があったり、タイ特有の背の低いパイナップル畑もある。
「ここは昔、スズが採れたとこね」
 採掘場跡だ。いまでは埋め立てが進み、いずれ住宅地になるとか。
「クルマは、やはり日本車が多いんですか?」
 ベンツのマークが前面についたバスと、何台もすれ違うが、乗用車や軽トラックは日本製のようだ。バイクも多い。
「日本車、高いです。バイクも安くない」
 ガイド氏によれば、バイクが住宅の半分、日本車は住宅の倍の値段とか。それにしては、バイクもクルマもやけに数が多い。バイクが約10万バーツとか。

 プーケット空港は、おもちゃみたいな空港だった。来たときには気づかなかったが、やはりタイ国際空港に比べれば小さい。その小さな建物のなか、メインロビーには、ラマ9世の写真が大々的に飾られている。
 フライトまでかなり時間があったので、土産物屋をのぞく。ただし、これはもうお世辞にもいい店とはいえない。田舎の駅前土産物屋といった感じ。貝細工や木の小物があるだけだ。しょうがないから、絵葉書を買い、日本宛てに出す。
 プーケット空港からTG6220便に乗り、タイ、ドン・ムアン空港に到着したのは夕方6時。すでに空港の外は薄暗くなっている。空港を出ると、相変らずの熱風だ。女性ガイドが待合室で待っていた。

 空港からホテルまで直行してくれるのかと思ったら、今夜の夕食はどうしますかとガイド嬢。まだ決っていなければ、いいところを紹介しますよとのこと。
 もちろん、まだ決っていない。といって、旨いものを食いたいとか、これが食いたいといった欲求のないのがうちの家族。まあ、せっかくバンコクに来たから、1度くらいは現地お勧めの店に行こうかということになり、そのままクルマで行ってもらう。
 空港から市内まで、クルマは高速を走る。眼下に、プーケットとは異なる喧燥が見える。ネオンが輝き、高いビルにはまだ灯がともっている。ところどころ、これまたラマ9世を称える装飾があり、これにもネオンがこうこうと輝いている。

 1時間ほどで市内に入り、タイしゃぶ屋さんに連れていかれる。地元でも、ちょっと高級で、しかも旨いと評判の店とか。もちろんガイドが店と契約しているのだろうことは容易に想像できるが、こんな機会ででもないかぎり地元の店に入ることはないだろう。
 そのタイしゃぶ屋 Coca は、あとで知ったのだが青山にも支店があるというタイスキ専門店。5階建てほどのビルの全フロアが客席で、そのあいだを赤い制服をきた女性が忙しく立ち働いている。

 タイしゃぶは、もちろん日本のしゃぶしゃぶとは違う。どちらかといえば鍋に近い。寄せ鍋だ。エビや野菜類をどんどん入れ、特性のタレで食う。このタレが2種類。日本風の醤油のようなタレと、タイ特有の辛いタレ。そして甘い烏龍茶。
 なぜかタイでは、烏龍茶が甘いのだ。いや、コーラもコーヒーも独得の甘さがある。辛いものを食い、口直しに甘い烏龍茶を飲むのだろう。それが熱風のタイでの生活の知恵なのかもしれない。
 タイしゃぶの最後は、雑炊。これは日本と同じように、鍋の最後にご飯を入れ、さらに卵を入れたもの。この雑炊が、なんとも旨いのである。それにしても、腹いっぱいになった。
 ニューヨークの韓国人街で入った焼肉屋でも感じたことだが、アジア人はとにかく食べることを楽しむようだ。店のなかに喧燥がうずまき、笑い声がたえない。香港でもそうだった。食べることに関して、きっと欧米人、とくにアメリカ人とはまったく異なる文化を持っているのだろう。

 食後のデザートにアイスクリームを食べる。隣の席には、タイの若い恋人といった2人。これがまた、よく食べるのだ。
 タイしゃぶ屋を出て、ほんの15分ほどで SOL Twin Tower Bangkok ホテルにつく。途中、クルマのなかから街中を見ていたが、どこをどう走っているのかわからない。狭い路地に入ったかと思えば、大通に出る。この大通が、5車線ほどあり、しかも対向車はその1車線しか使えなかったりする。なんとも不思議な街だ。高速道路の下に、屋台がたくさん出ている。トゥクトゥクが走り、バイクが疾走していく。どこもかしこも渋滞。これがウワサに高いバンコクの渋滞だ。

 ホテルのロビーで、ガイド嬢がチェックインをしてくれるのを待っていると、なんと日本のタレントがロビーにいる。テレビのディレクターなど、総勢12、13人。「頑張っていきましょう」などと気勢を上げている。
 このホテル、プーケットと同ランクでということで頼んでおいたのだ。が、去年ニューヨークに行ったとき、これで失敗した。リゾートと都心とでは、同ランクでもかなり格が落ちてしまう。それだけ物価が高いということなのだろう。
 ところが、これがけっこういいホテルなのだ。ロビーは広く、吹抜けにもなっている。部屋はさすがにプーケットほど広くはなかったが、そこそこ。続き部屋でなかったため、部屋間を移動するのがちょっと面倒だったが、わずか1泊。我慢というほどでもない。
 部屋に入って、窓から眺める。高層だから、そこそこの眺めなのだが、もちろんプーケットとはうって変わって、街の喧燥そのものが見える。いたるところで工事をやっている。ビルが立つ。高速道路がつながる。そして人々が、高層ビルと路地のあいだに住んでいる。ここはいまだに高度成長のつづくバンコクなのだ。




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