[新版]平成テクニカルライター養成講座

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技術評論社「The BASIC」連載
平成
テクニカルライター
養成講座
Text by Kazumi Takei

 



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今月のお題
第3回(97年3月号)
鮮度の高い
企画が命


indowsCEとNTで遊ぶ

 年末にひどい風邪をひいた。医者に行って薬をもらい、まる1日寝込んだ。熱はさほどでもなかったが、とにかく咳がひどい。おかげで腹筋がかなり鍛えられた。
 寝込んだ次の日、新宿紀伊國屋アドホックから電話があり、カシオのCASSIOPEIAが入荷したという。さっそく取りに行き、帰りにWindowsNT 4.0も購入してきた。年末年始は、このWindowsCEマシンと、そしてWindowsNTと格闘していた。

 と、ここまでのほんのわずか数行で、実は重要なことを2つ書いた。おわかりだろうか。  まず、冒頭で「年末に……」とはじめている。いやに古いことを、とお思いかもしれないが、この原稿を書いているのは松が開けたばかりの1月10日なのだ。年末は、ほんの10日ほど前でしかない。

 この連載では、なるべくリアルタイムの話題を書いていきたいと思っている。なぜなら、ライターが原稿を書く時期と、それを読者が読む時期とにどれだけ隔たりがあるか実感できるはずだからだ。
 そう、ライターが書いた原稿が読者に読まれるまでには、少なくとも数日、長ければ数カ月ものタイムラグがあるのだ。ライターは、まずそれをつねに意識していなければならない。

 たとえば、本誌は2月18日発行の3月号になる。今日は1月10日だ。原稿を書いている時期と、実際に読者に読まれる時期とには、なんと40日近くものタイムラグがあることになる。
 だから通常の雑誌記事なら、読者が読む時期にあわせて、「節分もすぎ……」なんて文章ではじめるだろう。3月号だから、「もうすぐ新学期。新社会人になる読者も多いだろう。社会人になる前に、パソコンくらいは覚えておこう」などとはじめてもいい。1月10日に、もうすぐ新学期もないものだが、しかし読者が実際に雑誌を手にとって記事を読むときには、そんな気分なのだ。

 雑誌によっても異なるが、通常週刊誌なら2、3日から1週間のタイムラグがある。かつて週刊誌の記者をやっていたことがあるが、この雑誌が火曜日発売だった。実際には月曜の夜には書店に配本される。編集会議は月曜、または火曜日。取材が水、木で、金曜日が締め切り。
 つまり、もっとも遅い記事でも、火曜日に読まれる記事が金曜日に書かれていたわけだ。この間4日。新聞社系の週刊誌ならもっと短縮できるが、それでも速報性では新聞やテレビといったメディアにはかなわない。

 月刊誌の場合なら、たいてい1か月から1か月半のタイムラグがある。1か月のタイムラグなら、つまり発売日の前月の同じ日が原稿の締め切り日だ。
 単行本になるともっと悲惨だ。原稿を上げてから編集、印刷、製本、配本といった過程を経て、やっと書店に本があらわれる。この過程にかかる時間は、もちろん出版社によって異なる。

 ぼくが経験したもっとも早い出版社でも、原稿を脱稿してから配本まで10日を切ったところはない。早くても、15日から20日といったところか。こういう出版社は、ライターにとっても大変ありがたいのだが、これは新幹線なみの早さだといっていい。
 通常の出版社なら、1か月から40日というのが編集・印刷・配本にかかる時間だ。実際にライターが原稿を書くのを1か月間とすれば、書きはじめてから読者が手にするまで、早くても2か月ほどかかることになる。
 遅い出版社では、原稿を書いている時間よりも編集にかかる時間のほうが長いこともある。原稿執筆1か月、編集2か月、印刷・配本1か月、合計4か月だ。1月に書き上げた原稿が読者の手に届くのは4月末のゴールデンウィーク直前などということになりかねない。

 これまで何度も書いてきたが、パソコンやソフトの解説書のような、移ろいやすいネタの場合、こんなに時間がかかるのでは致命的なのだが、そういう出版社やそういう何も考えていない編集者が、実際にたくさんいるのだ。そう、おたくだよ、N社やI社や……。  この連載でも、何度もいってきたが、もはやパソコンやソフトの解説書は、たとえ単行本であろうと雑誌感覚で作り続けるものなのだ。今日発売の新製品も、4か月たてばバージョンアップされていることも少なくない。

 いや、少なくとも半年もすればバージョンアップしているだろうし、もっと高機能、あるいは低価格のマシンが出ているだろう。編集や印刷に時間をかけるとは、本が必要とされる時期、つまり本の寿命を縮めているだけなのだ。
 これらのことを踏まえて、ライターはいかに速く、しかもいかに先を見越して原稿を書かなければならないかおわかりだろう。週刊誌なら週刊誌の、月刊誌なら月刊誌の、そして単行本なら単行本の、ライティングスタイルがあるわけだ。まず、そのことを肝に銘じておいていただきたい。

鮮なネタを見つける

 重要なことの2つ目は、WindowsCEやWindowsNTだ。もちろん、これそのものが重要なのではない。この時期、つまり96年の年末から97年の年始にかけて、WindowsCEやWindowsNTで遊んでいるという点である。

 96年11月の米COMDEXでデビューしたWindowsCE搭載マシンは、11月末には日本でも発表され、12月になって秋葉原などに姿を見せはじめた。COMDEXでも大きな話題になったWindowsCEだけに、すぐにでもチェックを入れたいものだ。
 そしてWindowsNT 4.0。本誌でも1月号で特集を組んでいたが、やはりWindows95の次にくる製品として、WindowsNT 4.0を欠かすわけにはいかない。

 もちろん、ライターにはそれぞれ得意分野や専門分野というものがある。だが、パソコンやソフトの解説書のライター、つまりテクニカルライターとして仕事をつづけていくには、現状ではWindowsマシンを標的にする必要がある。なぜか?
 Windowsマシンのユーザー数が、よくも悪くも現状ではもっとも多く、つまりそれだけ読者数も多いからだ。
 ことにテクニカルライターとしてこれから世に出ようと考えているなら、少なくともWindowsマシンを標的にしたほうが、デビューしやすいことだけはたしかである。

 ライター志望の方のなかには、実はいまだにDOSマシンを使い、自分はDOSについてエキスパートである、などとしたり顔にアピールする方もいる。もちろん悪いことじゃない。現状では、まだDOSに関して多少のニーズもある。
 だが、これから世に出ようというテクニカルライターが、DOSのエキスパートであっても、Windows95も使ったことがないなどというのではお先真っ暗なのだ。いい悪いではなく、いまはWindows95に関する、あるいはそれを前提としたアプリケーションの解説が必要とされているのである。ニーズがなければ、シーズだってない。

 97年には、Windows97が出てくる。すでにこのWindows97に向って、出版社もライターも走り出している。そのWindows97が出る前に、ではどんなテーマの本を出すのか、それが実は出版社の頭の痛い問題でもある。Windows97に関する本は、かくじつに売れる。そんなことはわかっているのだ。その前に、ではどんな本を出していくのか。
 出版社では、ネタがなければ本を出さなければいい、というわけにはいかない。月に何冊といった具合に、恒常的に新刊を出し続けていかなければ、出版社として取次店に相手にしてもらえないのだ。だから仮りに大部数が見込まれなくても、新刊を出す。

 ただし、新刊を出すには、それなりに利益の出る本でなければならない。わざわざ損をするような本を出す出版社も編集者もいない。当然、それなりの採算があって、はじめてゴーとなるのだ。
 では、その採算がとれるネタとは、どのようなものなのか。

 もちろん出版社によっても、また編集者によっても異なっている。が、概していえば、新鮮でニーズのあるネタだ。ま、当然だな。
 しかし、その当然のことが難しい。出版は水モノなどといわれるが、実際、出してみるまでわからないというのが本音なのだ。いや、出してもしばらくはわからない。初版8000部が売り切れればいいやと思ったネタが、あれよあれよという間に売れ、結局半年で3万部近くも出てしまったなどということもある。逆に、初版1万5000部で出発したWindows95本が、1年たっても5000部しか売れなかったなどという苦い経験のある出版社もある。

 95年末から96年の1年間に出版されたWindows95関係の本は、それこそ山ほどあるが、そのなかにはまったく売れなかった本も少なくない。それほど世の中甘くないということか。
 鉱脈は、どこにあるかわからない。わからないが、少なくとも新しいもの、ユーザーの気がかりなものであることはたしかだ。そしてそれは、新しいソフトやマシンだったりする。

 もちろん、まったく新しい鉱脈を掘り出すことも重要だが、その鉱脈もまた、新しい動き、新しいソフト、新しいマシンなどに触れていてこそ掘り起こせるものなのだ。
 この96年末から97年初頭にかけて、だからWindowsCEやWindowsNTに手を染めてみた、あるいはとても気になったというライターこそ、97年もまた生き残れるライターなのである。

クニカルライターの旨味

 実は、年末に風邪をひく前、某出版社の編集者と96年最後の打ち合せをした。このとき、翌年、つまり今年の執筆予定を組んだ。もちろん、それほど綿密な計画が組めるわけではない。業界の動向、読者動向といったものを分析しながら、単行本のとりあえずの執筆計画を立てたわけだ。

 で、どうなったか。すでに96年末の段階で、97年に執筆する単行本が7冊決ってしまったのである。実は、さらに改訂を行なわなければならない単行本が4冊あり、合計11冊の単行本の執筆が、すでに年末に決ってしまったのである。

 ここ3、4年、ほとんど同じなのだが、前年の年末には翌年執筆しなければならない単行本が、だいたい7、8冊〜12冊程度決定してしまっている。この計画に合わせて、1月から順にノルマをこなしていくというのが、ここ数年のライティングスタイルになってしまっている。

 もちろん、計画がそのまますべて実行されるわけではない。昨年の計画では、執筆しなければならない単行本が15冊決っていた。実際に脱稿した原稿は、16冊分。しかも計画の3分の1にあたる5冊は、まったく新しいネタで、つまり計画の15冊のうち改訂を含めて実際に脱稿したのが10冊で、あと6冊は計画になかったネタだったわけだ。
 これまで述べてきたことを考えれば、計画どおり執筆が進まないのはおわかりだろう。前年の年末に決まったネタなど、夏にでもなればすでに古くなって手あかがついてしまうものも出てくる。そういうネタに固執すれば、売れない本を出すことになる。

 重要なのは、その時期に最も新鮮で、他社が出していないネタ、しかも読者が見込めるネタで勝負することなのだ。
 もちろん、改訂本というのもある。他の分野のライターと異なるのは、一度読者をつかめたネタの本なら、数年は改訂作業だけでいける点だ。小説の改訂などというのは、まずない。ノンフィクションの改訂も、ほとんどありえない。だが、ソフト解説書なら改訂があたり前なのだ。

 ソフトがバージョンアップして売れ続ければ、その解説書もまた改訂するべきなのだ。本を買ってくれる読者のことを考えれば、つねに新しい情報、あたらしい利用法を提供すべきだし、そのための改訂は必要な作業なのである。
 改訂本とはいっても、ソフトの大幅なバージョンアップであれば、改訂もまた大幅なものになる。作業としては、実は最初から別の本を書き直したほうが楽なことも少なくない。前版の構成にしばられがちだからだ。改訂だから楽ですね、などとしたり顔にいう方もいる。同じネタで何年も同じ本を出してやがる、などという読者もいる。が、やれるものならやってみればいい。ソフト解説書の改訂が、いかに楽でない作業かわかるはずだ。

 もちろん、楽な改訂もある。手抜きライターだっている。が、そういう本は、翌年には改訂せず、廃版となるのがオチというもの。
 しかし、まったく新しいネタを考えたり、新しいソフトを1から使いはじめることを思えば、やはり改訂作業のほうが楽だといってもいいだろう。そして、毎年改訂できるような本を書ければ、これはテクニカルライターにとっての旨味に違いない。

 ライターである以上、本が売れ、何度も増刷をかさね、そして毎年改訂するような本の著者になれれば、これはもうライター冥利につきるし、夢の印税生活も遠くないというものだ。
 そして、そのためのネタを考え、生み出せるかどうかが、テクニカルライターとしてしぶとく生き残れるかどうかの分かれ目でもあるわけだ。

敗しない企画書の作り方

 どんなことに注意してネタを探せばいいのか、これでだいたいわかっていただけたと思う。必要なのは、鮮度が高く、しかも読者のニーズのあるネタだ。
 とはいっても、まだあまりピンとこない方も少なくないだろう。というわけで、本連載でリアルタイムに単行本の作られ方というのを報告していこう。企画書の作り方から、実際の執筆、そして出版までの過程だ。

 ただし、手の内をすべて明かしてしまうのだから、業界関係者はくれぐれもパクったりしないように、お願いしまよ!

 年末に、WindowsCEの搭載されたカシオのCASSIOPEIAを購入したと、冒頭に書いた。この解説書を出版してしまおう。そのための企画書を、まず作ってみよう。
 CASSIOPEIAは、魅力的なマシンだ。実は、実際に使ってみると、WindowsCEにはそれほど魅力を感じないというのが正直な意見でもある。が、それでもCASSIOPEIAそのものは面白い。

 175×92×26.5ミリ、380グラムという本体は、かつて大きなブームになったHEWLET PACKARD社のHP 200LX(160×86.4×25.4ミリ、312グラム)と比べると、ほんのひとまわりほど大きいだけだ。
 この大きさで、Windows95とほぼ同じ操作性を持つWindowsCEが搭載されている。HP 200LXは、日本語で利用するためにはかなり専門の知識が必要だったが、CASSIOPEIAのほうは日本語版も発売される予定で、初心者でもすんなりと入門できるだろう。

 モバイル大好きユーザーにとっては、これは買いのマシンだ。いや、CASSIOPEIAに限定されない。同じようなマシンがCompaq、HITACHI、HP、NEC、Phillipsなどからも出てきており、その日本語版が発売されれば、ユーザーの選択肢は一気に増える。いまのところ、ショップで購入できる製品として出ているのが、カシオのCASSIOPEIAだけ。そのCASSIOPEIAに搭載されたWindowsCEは、しかし各社ともほとんど変わらないはずだから、CASSIOPEIAの解説書でも十分に他のマシンの参考になるはずだ。
 いや、その点を強調して、WindowsCE入門といったサブタイトルをつけてもいい。実際にCASSIOPEIAの日本語版が発売されるころには、他社の動向ももっとはっきりしてくるだろう。

 企画書の冒頭に記すのはタイトルやサブタイトルだが、これは出版社によってつけ方が異なってくる。そのものズバリのタイトルをつける社もあれば、ひねったタイトルをつけたがる社もある。出版社の方針もあれば、編集者の好みもあるし、営業からの要望だってある。
 だからタイトルは、とりあえず仮タイトルということで、「CASSIOPEIAではじめる WindowsCE徹底入門」などとしてみよう。ドキッとするようなタイトルがいいのだが、ここは正攻法でいくことにする。重要なのは、タイトルよりも内容なのだから。

 タイトルの次に書くのは、その本の目的だ。あるいは趣旨といってもいいし、内容概略でもいい。分量は、あまり多くは必要ない。
 それよりも必要なのは、なぜその本を出すのか、出版することの意義、そしてユーザーのニーズがあるかどうかだ。

 残念なことに、パソコン関連の書籍を出版している社の編集者のなかにも、「WindowsCEってなんですか?」と首をひねる人さえいる。悪くいえば、新しいものに対して鈍感な人だ。先見性がないともいえる。まじめに仕事をする気があるのか、と疑いたくもなるが、まあ大目に見ておこう。
 こういう編集者をその気にさせるのが、企画書のこの部分なのだ。それでもその気にならない編集者もいるが、それは趣味の違いだといってあきらめよう。何も出版社は1社だけではない。

要は釣り書きだ!

 企画書のタイトルの次に書くのが、概要であるが、これはいってみれば見合写真に添える釣り書きのようなものだと思えばいい。

 釣り書きというくらいだから、エサをつけて魚を釣るように、甘い言葉が書かれていなければならない。ウソはいけないが、ほとんど詐欺に近い言葉が書いてあっても大目に見てもらえる。逆にいえば、釣り書きなど誰も本当に信用しているわけではないが、甘い言葉のない釣り書きでは、実際に会う前から断られてしまうのがオチだ。

 というわけで、ここには大言壮語が連なっていてもいい。たとえば、WindowsCEマシンは、セカンドマシンとして必ずビジネスマンの必携品となるだろう、などと書いてもいい。もちろん、そのためには現在、ビジネスマンのあいだにPIMマシンとしてシャープのザウルスが売れている、という現実を踏まえてのことだ。
 Windows95と共通の操作性を持つWindowsCEだからこそ、初心者にも十分に入門できる、という点を強調することも必要だろう。キーワードは「初心者」だ。

 特定の分野やソフトの解説を行なう場合は別として、出版社が欲しがっているのは、“売れる”企画なのだ。売れるとは、部数が出ることにほかならない。そして部数を見込めるのは、とりあえず現在は初心者向けの解説本なのだ。当然ながら、エキスパートよりも初心者のほうが数が多い。そして初心者ほど、解説本を欲しがっている。

 この点がわかっていれば、なぜエキスパート向けの本がほとんど出てこないのかおわかりだろう。誰だって売れる本を作りたい。部数を出したければ、初心者向けの本を狙うのが正道なのだ。

 もちろん、もうそろそろ中級者向けの解説本が出てきてもいい時期にきている。が、とりあえず初心者向けであることが、企画の上では無難だといえるだろう。エキスパート向けの、あるいは中級者向けの本を出すためには、それを作る編集者もまたエキスパートであり、あるいは中級者でなければならない。そして現状では、そんな編集者は少ないのである。しかも、圧倒的にエキスパートや中級者よりも、初心者の数のほうが多いのだ。

 HP 200LXの解説本が、予想に反してかなり好調な売れ行きだったことも強調していいだろう。そして、そこから導き出される「モバイルものは売れる」という予想も出していい。さらに、パソコン通信やインターネットの普及とブームを踏まえた上で、どちらも簡単に利用できるWindowsCEは、だから確実に普及するのだ、という大胆な予測を出してきてもいい。
 それらがどうも眉唾であることは、企画書を書いている著者も、あるいはそれを見る編集者も、薄々感じていることなのだ。それでも、この新しいOS、新しいマシン、新しい分野に、手を出してみたいと思う著者の意欲や熱意と、それに巻き込まれる編集者の賛同があれば、この企画書はぜったいに通るはずだ。

 とりあえず今月は、ここまで。次号では、実際の企画書とその内容を公開しよう。具体的な企画書を出してしまうが、それを応用して、自分だけの企画書を書く訓練だってできる。また、絶対にとおる企画書作りのポイントも、次号ではまとめて紹介するから乞ご期待。
 なお、今月号でふれたさわりだけの企画を、ぜひ本にしたいという出版社があれば、これまたご連絡していただきたい。その執筆、編集、出版過程をもぜひ紹介していきたい。





今月のお題

 1月号のお題は、フォーマットについて簡単に説明せよというものだった。たくさんの電子メール、おハガキをいただいた。実は、まったく反応がなかったらどうしようかと、内心びくびくしていたのだ。感謝。

フォーマットについて簡単に説明せよ」という質問は、実はかなり意地の悪い質問だ。まず、フォーマットという言葉そのものには、いくつもの意味がある。英語のFormatであるのはいうまでもないが、だから「体裁、型といった意味」と答えてくるようでは、テクニカルライター失格だ。本書は、翻訳者を養成しようというのではない。あくまでテクニカルライター養成講座なのだ。
小川祐司さんからいただいたメールには、次のように書かれていた。

「format」。直訳すると、「形」「体裁」「(書籍の)判形」など。コンピュー タの世界では、データを記録あるいは記述する際の「書式」のこと。とくにパソ コン関係ではフロッピーやハードディスクなどの外部記憶装置のデータ記録形式 を指すことが多い。また、そういった外部記憶装置に特定の記録形式(フォーマ ット)を適用して実際に使える状態にすることを「初期化」「フォーマッティン グ」と言うが、これと同じ意味で「フォーマット」という言葉が動詞的に使われ、 「ハードディスクをフォーマットする」などと言うこともある。
 なかなかいい。最初の1文は不要だが、そこそこ簡潔にフォーマットの説明がなされている。粗削りで、手を入れたくなる部分はたくさんあるし、実際にパソコン初心者がこの文章を読んで、はたして理解できるのかどうか疑問だが、この程度にまとめられていれば、もう少し目的を明確にして質問すれば、きっと的確な回答が返ってくるだろう。
 はまじんさんからいただいた回答は、初心者にもよくわかるのだが、とても冗長で、“簡単に”という要望が満たされていなかった。また、増田弘実さんからいただいた回答では、ディスクのフォーマットの説明そのものがほとんどなく、FORTRANの書式設定やメールの定型について書かれていたりした。

 意地の悪い課題だと述べたとおり、簡単にフォーマットについて説明するのは容易ではない。簡単にというと、すぐ箇条書きにする人もいるが、これは失格。箇条書き=簡単・明瞭という図式は、文章書きを生業としようと思うなら、すぐさま捨てていただきたい。  実際、この図式から抜けられない編集者も多いから、無理にとはいわないが、少なくとも箇条書きならわかりやすいと誤解してはいけない。

 初回だからこの程度にしておこう。いただいた回答は、いずれもDOSに付属するマニュアルよりもわかりやすかったことだけは付記しておこう。ただし、来月からはもっと厳しく添削するので、そのつもりで、カカッテキナサイ!

 では、今月のお題。


「WindowsCEとはなにか、400字以内で簡単に述べよ」

 なお、回答は封書または(
ここ)でどしどし御応募ください。どうやら担当編集者のイキなはからいで、プレゼントが出るようです。

[目次]

Copywrigth (C) 1997 by Kazumi Takei. All Rights Reserved.