アップル vs アマゾン vs グーグル
~電子書籍、そしてその「次」をめぐる戦い~
・武井 一巳
・毎日コミュニケーションズ(マイコミ新書)
・2010/08/24発売
・ISBN:4839935637
・819円
2010年は、アップル(Apple)社の歴史にとって記念すべき年として、その歴史に大きく刻まれることになるだろう。
この年1月に、スティーブ・ジョブズCEOはかねてから噂の新しいタブレットPCであるアイパッド(iPad)を発表した。米国だけでなく、この模様はインターネットでも中継され、深夜にもかかわらず日本からも多くのユーザーが視聴した。
このアイパッドは4月に米国で発売されるや(日本では5月末)、爆発的な売れ行きとなり、発売後1カ月で販売台数が100万台を、発売後80日で300万台を突破した。
さらに6月には、今度は新型のアイフォーン(iPhone)4と、その基本ソフトであるiOSを発表・発売している。このアイフォーン4は発売3日で170万台を突破したのである。
新しい製品を投入しただけではない。アイパッドの目玉の一つともなったのが、電子書籍を読むためのアイブックス(iBooks)だが、その電子書籍を販売するためのプラットフォームであるアイブック・ストア(iBookstore)も、アイパッドの発売に合わせてスタートさせている。
この電子書籍の分野では、07年に米アマゾン(Amazon)が電子ブックリーダーのキンドル(kindle)を発売し、電子書籍を普及させてきた。09年末には瞬間風速的だがとうとう電子書籍の売り上げが紙の書籍を上回っている。そんな状況の中に、電子ブックリーダーとしての機能を持つアイパッドが発売されたのである。
しかも検索エンジンのグーグル(Google)も、オープンソースとして開発を進めているアンドロイド(Android)を搭載する、電子ブックリーダーを発売して電子書籍の分野に大々的に打って出るとの予測もあり、そのための電子書籍のプラットフォームであるグーグル・エディション(Google Editions)を発表している。
さらにグーグルは、アンドロイドをOSとする携帯電話を発売し、このアンドロイド携帯電話で利用するアプリケーションを発売・配布するためのアンドロイド・マーケット(Android Market)を展開しているが、これはアップルのアイフォーン、さらにアイフォーン用のアプリケーションを配布するアップ・ストア(App Store)と大きく競合するものだ。
一方で、グーグルが得意としているクラウド・コンピューティングの分野で、意外なことにアマゾンがEC2、S3というクラウド・サービスを提供して、存在感を増している。
こうしてここ数年のIT業界の動きを見てくると、アップル、アマゾン、グーグルの3社が突出していることがわかる。ハードウェアからスタートしたアップル、オンライン物販のアマゾン、検索サービスを急成長させたグーグルの3社である。
それぞれのスタートはまったく異なるものの、3社が目指すものが何なのかは、おぼろげながら見えてくる。デジタルの覇権だ。
21世紀に入ってインターネットが普及し、従来のマスメディアの力が徐々に低下してきた。さらにここ数年は世界的経済危機で広告収入が激減し、新聞やテレビ、出版が収益減に苦しみ始めている。
これらの従来のマスメディアが握っていた膨大なコンテンツを、どのようにネットで流通させ、収益に結び付けていくか。ネット展開に苦しむマスメディアを尻目に、IT業界ではすでにこれらのコンテンツをどう消費者に届け、収益を上げるかを模索している。その先頭に立つのが、前記のアップル、アマゾン、グーグルの3社なのである。
デジタルコンテンツの面から3社の戦略を見ると、共通したものが見えてくる。クラウドを利用したコンテンツのプラットフォームである。
アップルのアップ・ストアとアイブック・ストア、アマゾンのキンドル・ストア(Kindle Store)、グーグルのグーグル・エディション。これらのプラットフォームの上で、デジタルコンテンツをどう収集し、販売していくのか。そして、それらをどう収益に結び付けていくのか――。
先頭を走るアップル、アマゾン、グーグルだが、しかしその戦略によってはどこかが突出し、あるいはどこかが脱落することもある。それほど急激に動いている世界なのだ。
本書では、デジタルの覇権をめぐる3社の戦略や、最新の動向を分析した。この3社の戦略を分析し、どこがデジタルの覇権を握るのかを予測することは、IT業界のみならず、多くの方々にとって参考になるだろう。
(「はじめに」より)
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