2009年09月09日

仕事するのにオフィスはいらない-ノマドワーキング

 昨年、ある企業を取材して驚いたことがあります。大企業で立派な社屋があるのですが、社員にはデスクがないというのです。
 代わりに、喫茶店のカウンターのような場所が社内のあちこちにあり、社員は出社してくるとノートパソコンを持って好きな場所に移動しながら仕事をこなす。

 IT系企業でしたので、そんなワークスタイルもあるのかと思ったのですが、これは企業の"ノマドワーキング"化なのかもしれません。

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
佐々木俊尚
光文社
798円
ISBN:4334035159
2009/07/16発売

「仕事するのにオフィスはいらない」(佐々木俊尚 / 光文社)で、著者は

「日本語に直訳すれば、「遊牧民」。北アフリカの砂漠や中央アジアの草原で、羊や牛を追って生活している彼らが、ノマドです。(中略)
 遊牧民がラクダという砂漠で最強の乗り物を駆り、オアシスからオアシスへと移動しながら生活しているように、狭苦しいオフィスを出て、さまざまな場所を移動しながら働いている人たちです。
 言ってみれば、「オフィスのない会社」「働く場所を自由に選択する会社員」といったワークスタイルを実践している人たちのことです」

 と定義しています。しかし、現実にはすでに先進的な企業でさえ、ノマド的なワーキングが実践されはじめてきています。

 ノマドワーキングを可能にしているのは、ブロードバンド、サードプレイス、クラウドの3つのインフラですが、本書ではこれらの利用法を具体的に紹介しながら、さらにノマドワーキングのためのアテンションコントロールなどにも言及しています。

 このノマドというワーキングスタイルは、実はかつて流行ったSOHO(Small Office/Home Office)を発展させたものといってもいいでしょう。SOHOを発展させ、しかもブロードバンドの普及と快適なサードプレイスの出現、さらにクラウドによって、"どこでもオフィス"化が可能になり、仕事をするのにことさらオフィスは不要になってきたわけです。

 これは拙著「雲のなかの未来―進化するクラウド・サービス」でも紹介しましたが、グループウェアのサイボウズの創業者である高須賀宣氏も、「企業経営のあり方もこの数年でまったく変わりました。ベンチャー企業では特定のオフィスを持たないことも普通です。プロジェクトごとに必要な技術者を集め、喫茶店でミーティングし、その場で新サービスを作ることも珍しくありません」と日経ソリューションビジネスのインタビューで答えています(日経ソリューションビジネス)。

 ただし、そういうワークスタイルは、フリーランサーならすでに何十年も前から実践してきたものです。30年以上前、まだ原稿用紙に手書きで原稿を書いていたとき、私の主な執筆場所は自宅の他に、出版社の編集部だったり喫茶店のカウンターだったりしました。半分以上は、そういうオフィス(自宅)以外の場所だったわけです。

 ノマドワーキングは、しかし着実にビジネス社会に浸透しつつあります。このノマドワーキングを効果的に実践するためのノウハウが、本書には詰まっています。しかも、本書が多くのページを割いて紹介しているアテンションコントロール……ノマドワーキングを継続するための精神のコントロール法は、これからオフィスを持たずに仕事をしていこうという人に、必ずや参考になるはずです。

投稿者 kazumi : 2009年09月09日 23:02 | トラックバック |


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