2007年02月07日

リアル書店とネット書店

 出版業界や書店が、生き残りをかけてさまざまな取り組みを行なっている。そのひとつに、書店の検索機能がある。

 ほしい本を瞬時に探し出す利便性で急成長を遂げた「ネット書店」に負けじと、既存の書店が在庫の検索サービスに磨きをかけている。携帯電話に店内の地図を表示して書棚の前まで案内してくれたり、他社の書店の在庫まで調べられたり…。街中の書店でも、お目当ての1冊との距離は確実に縮まっているようだ。――イザ!-ライバルはアマゾン!在庫検索サービス競う書店

 記事には、紀伊國屋書店がはじめた携帯向けサイト「キノナビ・モバイル」(http://mobile.kinokuniya.co.jp/)や、三省堂神田本店のタッチパネル端末などが紹介され、実際の書店の声として次のように紹介されている。

「店の近くにいるときに携帯サイトを使って在庫を調べれば、お客さんは無駄足を防げる。ネット通販と違って実際に足を運んでもらうので、周辺の棚にある多くの関連書籍や情報を見てもらえるメリットもある」と、店売推進部の山崎賢司店舗システム課長は話す。

 認識としては、かなり甘いのではないか、と心配になってくる。現場の書店員は、自店以外の書店やネットで本を日常的に購入しているのだろうか、との疑問も出てくる。

 キノナビ・モバイルのような検索サイト、あるいは書店の検索端末は、たしかに便利ではある。だが、自分の欲しい本がわかっていれば、ダイレクトにアマゾンなどで検索し、在庫があればこれを購入したほうが便利だ。
 本を検索するというのは、検索する目的のものがわかっているわけで、これならネットで検索したほうがずっと速いし、いくつかのオンライン書店を縦断して検索することだってできる。第一、真夜中だって検索・購入が可能なのだ。

 検索してヒットした本は、ポチッとボタンを押せば、翌日か翌々日には宅配便で送られてくる。クレジットカードも利用できるし、アマゾンのコンビニ支払いを利用すれば、メールで送られてきた番号を近所のコンビニのレジに打ち込むだけで、手数料なしで料金が支払える。もちろん、料金を支払った翌日には、やはり宅配便で本が送られてくる。

 欲しい本がわかっていれば、ネットのほうが便利なのだ。これは、とくに大型書店が近所にない郊外や地方のユーザーにとって大きな魅力でもある。
 携帯サイトで検索を行ない、欲しい本があれば在庫を調べ、あれば書店に出向いて本を購入する……その手間や時間をかけさせる発想に、書店の限界があるのではないだろうか。そういう商売を、延々と続けてきたのである。

 書店に足を運べば、「周辺の棚にある多くの関連書籍や情報を見てもらえるメリットもある」というのは、確かだろう。だが、最近ではアマゾンのレビューや同じテーマの商品紹介、あるいは著者別検索などの紹介や機能のほうが、ずっと参考になる。仮想書店が、リアル書店をはるかに凌駕する機能を持ってしまったのだ。

 その認識の上に立てば、書店がネットを利用する方法は1つしかない。自社のオンライン書店サイトを構築するしかないのだ。そして、リアル書店では、高価で分厚い書籍を、じっくりと比較して選べるようなスペースを提供する。

 紀伊國屋書店やジュンク堂書店、三省堂書店(ビーケーワンと提携)など、大型書店はすでにオンラインショップを運営している。無理にリアル書店に資本をつぎ込むよりも、これらのオンラインショップをもっと充実させていくことが、今後の書店の生き残り策としてはベターなのではないだろうか。

 CNET Japanの「ウェブでの書籍購入経験者は6割以上に--モバイルの利用にはまだ課題も」という記事によれば、、「パソコンのウェブサイトでの購入経験者」は63.75パーセントいたという。
 調査対象や年齢層などが判然としないため、この調査を一概に信用することはできないが、それでもリアル書店よりネット書店で本を購入するユーザーは、かなり増えてきているのではないだろうか。

 書店の生き残りに、どこが妙案を見つけ出すか。小さなパイの奪い合いではなく、パイを増やす方策も考えてほしいものではあるが。

投稿者 kazumi : 2007年02月07日 14:19 | トラックバック |


コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?