2004年10月11日

奥田英朗「東京物語」

 以前、第131回直木賞を受賞した奥田英朗さんのことについて書いた(直木賞と青山ブックセンターの閉店)。このとき読んだ「イン・ザ・プール」(奥田英朗/文芸春秋)が、けっこう面白かったのだ。
東京物語
 で、9月末に「東京物語」(奥田英朗/集英社文庫)が出ていたので、こちらも読んでみた。
 6編の中篇で構成された、80年代の青春グラフィティといった感じのものだ。これが面白い。それぞれその年代の雰囲気と、流行したモノや有名人などをさりげなく出して、時代そのものをきっちりと切り取ってしまっている。
 実はこの6編は、時系列には並んでいない。時系列ではないが、季節によって並べられている。読んでいくと、時代を前後するために不思議な感じがするが、こういう並べ方もありなんだと、最後に納得してしまう。

 クラプトン、キャンディーズ解散、ジョン・レノン殺害、名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊、ウォークマン、松田聖子、ルービック・キューブ、テクノポリス、ブルータス、江川卓の初登板、状況劇場、野田秀樹、いとしのエリー、ブラック・レイン……。

 これらの言葉を見るだけで、当時の状況が鮮やかに脳裏に甦る人なら、ぜひ読んでみるといいです。清水義範「青山物語1971」(光文社文庫)「青山物語1974―スニーカーと文庫本」(光文社)などが好きな人なら、きっとハマるでしょう。このころの奥田の作風は、これらの清水義範の作風に近いものがあります。

投稿者 kazumi : 2004年10月11日 02:51

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