2004年06月14日

札幌刑務所4泊5日

 以前ここでも紹介した東 直己の、新刊が出ていました。

 新刊といっても、以前出た本の再文庫化です。
札幌刑務所4泊5日
 光文社文庫の6月の新刊です。「札幌刑務所4泊5日」(東直己/光文社文庫)ですが、実は持っていなかったのです。
 持っていなかったのは当然で、この本は1994年に扶桑社文庫の1冊として発刊されたのですが、その後ずっと品切れ状態(というより、絶版状態)だったのです。最初に文庫で出たためか、見逃していたら、あっという間に品切れになってしまったのです。それがやっと再文庫化されたというわけ。

 あとがきでも記されていますが、著者唯一のノンフィクションであり、ルポルタージュであり、ドキュメンタリーです。内容は、タイトルそのもの。4泊5日で、札幌刑務所に入った著者の体験談です。

 収監されたのは、原チャリ(50ccバイク)でのスピード違反。罰金7,000円の違反キップを切られたのをいいことに、何とか刑務所に入ってみたいと悪戦苦闘し、やっと収監され、その体験を実に面白く再現したものです。

 ここまでするか、という感想と、そうだよな、するよなというモノ書きとしての共感。なかなかできることじゃあ、ありません。

 罰金を払わずに、刑務所に入る。それにはいろいろとメリットがある。罰金分のお金が確実に浮く。そしてまた、入所した期間の食費も確実に浮く。見聞を広めることもできる。
 入所前に考えていたメリットは、その程度だったが、その時には想像もしていなかった、思いもつかない利点もあった。
 健康診断が受けられたのだ。
――「札幌刑務所4泊5日」(東直己/光文社文庫)

 全編こんな感じで、初めての刑務所暮らしを、好奇心そのままに描いています。好奇心のかたまりです。見倣いたいほどの好奇心です。この好奇心が、札幌を舞台にしたハードポイルドを生み出す原動力になっているのかなあ。

 しかし、こんな面白い本が、10年近くも絶版状態にあったということが、出版界の危機的状況そのものを示してもいます。
 東直己、ますますのお勧めです。

投稿者 kazumi : 2004年06月14日 17:36

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