2004年05月23日

駆けてきた少女

 紹介したくないような、でもしたいような、しないとタイミングも逸しちゃうし……。

 ハードボイルドというと、好きな人は好きだけど、嫌いな人はまったく読まない分野かもしれません。でも、それってきっと気に入ったハードボイルドに出会わなかったからでしょうね。ハードボイルドは、現在のミステリーブーム(というほどのものじゃない)を見れば、必ずもっと多くの読者に受け入れられるはずのもの。
悲鳴
 そのハードボイルドに分類される著者のひとりに、東 直己がいます。ぜったいお勧め。
 この東 直己の新刊が、「悲鳴」(東 直己/ハルキ文庫)です。ただし、2001年に角川春樹事務所から出した単行本の文庫化です。

 すでに読んでいる方もいらっしゃるでしょうから、ちょうど同じころ出た、正真正銘の新刊を。こちらは「駆けてきた少女」(東 直己/ハヤカワ書房)です。
駆けてきた少女
 東 直己は、北海道に住み、北海道を舞台とするハードボイルドを書きながら、根強いファンのいる作家。北海道で、北海道を舞台とするハードボイルドというと、なんとなく想像がつくかもしれませんが、東の書く小説は、実は舞台なんて関係ない。北海道でも、あるいは埼玉でも大坂でも東京でも京都でも、どこでもよかったりします。地名に依存しないところが、歌舞伎町ミステリーや渋谷小説とは一線を画す点でしょう。

 もともと東は、90年代初頭に「探偵はバーにいる」(早川書房)で出てきたんですが、これがまさしく北海道を舞台としたハードボイルド。以来、一貫してこの姿勢を貫いていますが、このデビュー作からして舞台は北海道である必要がなかった。軽妙なタッチで、しかもハードボイルド。この相反する要素を、見事に融合させているんだけど、何てったって寡作で、なかなか新刊が出ない。

 そうこうするうちに、2001年に「残光」(角川春樹事務所)で第54回日本推理作家協会賞を受賞。ファンとして、やっと光が当たったという思いで嬉しかったのですが、しかし相変らずの寡作ぶりは変わらず、新刊が出ない。しょうがないから、以前出した本を再読したりしてるんだけど、それでも30作くらいしかない。

 出たら必ず買う、でも、なかなか出ない。そういう大好きな作家の新刊です。

投稿者 kazumi : 2004年05月23日 06:06

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